名称:特定非営利活動法人「老いの工学研究所」

住所:大阪府大阪市中央区伏見町四丁目2番14号

設立:2012年5月

TEL:06-6223-0001

内閣府NPO法人データベース

貸借対照表

●設立趣旨

『不老不死』、この甘美で見果てぬ『夢』を追い求めてきた人類は、ようやく『長寿社会の実現』というところにまでたどり着きました。

日本においては、わずか500年前に織田信長が『人間五十年』と謳った寿命しか持ち得えなかったものが、今や『不老長寿』ともいえる時代の到来を予感させ、秦の始皇帝が世界中に使者を遣わし追い求め、『夢』でもあった『不老不死』の妙薬を今まさに手に入れんとしています。しかしながら、われわれは今、果たして憧れ続けてきた『夢』を手にしていると言えるのでしょうか。

現在、日本人の平均寿命は80歳代に到達し、『長寿社会』を実現した反面、少子高齢化による就業者人口の減少は、消費の低迷、税収の低下、年金制度の改定など大きな政治課題を惹起する要因となり、追い求めた『夢』を手放しで歓迎できる状況ではなくなりつつあります。

換言すれば、現代を生きる高齢者にとっては、『長寿社会の到来』という『夢』の実現というよりも、『高齢化社会の到来』によって生まれた『未だ経験したことのない、永い余命』すなわち『老後』の暮らし方に対する不安がむしろ増大しているのではないでしょうか。これは、現在の高齢者が世代を通じて初めて直面する課題です。こうした不安は、若い世代が老いること自体を忌み嫌い、恐れ始めるという歪みを生むことにつながっているのかもしれません。

解決の方法として、宗教や歴史あるいは死生観をも異にする以上、北米におけるアシステッド・リビングやリタイアメント・ハウスなどの住宅や、北欧におけるエーデル改革に代表される高負担高福祉を前提とした制度を単純に輸入することに合理性があるとは思えません。 

こうした状況の中で、わが国では、この永い老後を控えた高齢者が、今後自分の『老後』をどのように迎えるべきかという問題について、いまだに解答を持ちえていません。この為、高齢者のライフスタイルについて研究し、提言することは、高齢者だけでなく、それを支える人たちにとっても必ず有益で、ひいては『老いること』を誰もが恐れずに受け入れることのできる社会の実現に大きく寄与するものと考えております。

われわれは、『老いの本質』を、流行や情緒にとらわれることなく、過去と現在の比較分析を行う等、自然科学に人文科学・社会科学を加えた幅広い視点で究明し、現在の高齢者を取り巻く問題の解決策を提示するという工学的アプローチによって、『老い』の精神文化、『老い』のライフスタイルを創造して啓蒙し、こうした研究を通じて、老いることを誰もが恐れずに楽しめ、憧れるような、いつまでも活力のある社会を作り上げることを目的として『老いの工学研究所』と名付け、設立するものであります。


調査活動|高齢者を知る

老いの工学研究所では、研究の大前提として、今高齢者が「どのような環境で」「どのような考え方を持って」「どのように生きているのか」を、モニター会員の方々の協力のもとに、定点調査・アンケート調査などで解明していきます。また、こんな生き方ができればなあと思えるような、高齢者の方々へのインタビューなども積極的におこなっていきます。

研究活動|理想的な老後のあり方を究明する

老いの工学研究所では、調査活動によって得られた結果を基に、「高齢者がどうすれば活き活きとした生活を送ることができるのか」「これから老いを迎える世代は、どのような心構えをもつことで老いを楽しみにすることができるのか」、はたまた「理想的な死に様とは」といったさまざまな疑問に対する解答を、流行や情緒にとらわれることなく、過去と現在の比較分析をおこなうなど、自然科学に人文科学・社会科学を加えた幅広い視点で究明していきます。

提言活動|活き活きとした長寿社会の創出に向けてメッセージする

老いの工学研究所では、調査結果・研究成果について、講演やホームページなどで広く開示していくとともに、企業などへの資料提供、政府・地方公共団体などへの提言などを通じて発信し、「老いることを誰もが恐れずに楽しめ、憧れるような、いつまでも活力のある社会を作り上げる。」という、設立の趣旨の実現に邁進してまいります。


●向齢者憲章

 老いの工学研究所は、誰もが老いを恐れず、むしろ憧れるような社会を創造することを目指しています。そのためには老いに抗うのではなく、老いと向き合って生きる“向齢者”の存在が欠かせません。

 私たちは、今まさに人生の後半期を生きる人々や次の世代が、“向齢者”となるために身につけるべき考え方や生き方を「向齢者憲章」としてここに定めます。

  1. 【有終】来し方を振り返り、これからの生き方を決め、死を有終の美としよう。
    死をどのように受け入れ、寿命を迎えるまでどう生きるかを決めるのは、子ではなく医師でもなく、自分である。人生を振り返り、この先を想像し、準備を整えることによって、残された時間を充実したものにできる。

  2. 【自律】自らの意思に従い、自律的に行動しよう。
    流されず、媚びもせず、群れることもなく、自分の信念と意思に従って行動する。与えられ、やらされていては楽しみもやりがいも感じられない。楽しみややりがいは、自分の頭で考え、自分で選択した行動の中にある。

  3. 【貢献】培ってきた知恵と能力を発揮し、地域や社会に貢献しよう。
    年を重ねれば健康を損ね、肉体的に衰えるのは当たり前であり、生きる上でそれを忌避してはならない。私たちは、経験に基づく多くの知恵を蓄積、活用し、後世の人々ために尽くす役割を担っている。

  4. 【体現】個人として矜持を、社会人として規範を持って振る舞おう。
    功績や努力への誇りだけでなく、失敗や怠りに対する反省も踏まえ、率直かつ自然な態度を堅持する。次世代に対する役割を自覚し、授かった齢に相応しい姿と言動を、身をもって示す。

  5. 【尊厳】必要以上の助けを借りず、尊厳を保って暮らそう。
    老いに抗うのではなく、弱者として扱われることに抗うべきだ。自らを弱者(自立していない人)と呼ぶ者は、期待も尊敬もされない。自立し、尊厳を保って暮らすことにより、人生の最期を有終の美にできる。

    2014年5月