日本の高齢者は、どれくらい働いているか(国際比較)

下のグラフは、高齢者労働力率(65歳以上の人達の中で、仕事をして収入を得た人の割合)の国際比較である。発表した「労働政策研究・研修機構」は、高齢者労働力率が低下した国では、「年金制度を充実させたこと」「高齢者が多く従事している第1次産業の就業者数が減少したこと」が共通しており、EU諸国では、経済不況や若年失業者の増加対策として、企業に早期退職制度が定着したことも一因になっていると分析している。

日本は1975年の44.4%から、28.8%と低下したものの、シンガポールや韓国(このデータにはないが)と並んで、高齢者が世界でもっとも働いている国の一つである。勤勉・真面目な国民性で、高年齢者の労働意欲が高いとも考えられるが、平成18年度の国民生活白書によれば、65歳以上の就業者の6割超が「経済上の理由」で働いていると回答しているから、話はそう単純ではない。生きがいや社会参加、健康維持などを目的に、生涯働き続けるのであればよいが、生きていくために、嫌でも働き続けなければならない人が多いのだとすると、老後の生活が厳しい国であることを意味しているとも考えられる。

とは言え、高齢者雇用の促進は重要な政策課題である。それは単に、年金の支給開始年齢引き上げに対応せざるを得ないというだけでなく、生産年齢人口の減少を食い止め、経済・社会を活性化させるためには、高齢者にも長く元気で働き続けてもらう必要があるからだ。しかしながら、企業は高齢者雇用の促進に後ろ向きである。定年を65歳にするよう義務付ける法案にも、各経済団体が明確に反対を表明しており、企業は高齢の社員をこれ以上雇い続けたくないというのが本音だ。まとめれば、生活を維持するために働かざるを得ない高齢者は多いが、喜んでそれを受け入れる企業は少ない、というのが現状なのではないだろうか。

このような高齢者の労働に関する需給ギャップを解消するには、高齢者自身がスキル、ノウハウ、ネットワーク等を棚卸しし、冷静に把握し、積極的に開示していく必要がある。失礼ながら、今の高齢者世代には、会社が順調に成長し、自身もそれに伴って昇進を続けてきた中で、自分には何ができるか、どのような強みがあるかをしっかり振り返った経験のない人が多いように思う。若いときは得意分野というものがないから、気が進まなくても目の前にある仕事に取り組まざるを得ない面はあるが、年をとったら各人各様の得意分野で、豊富な経験を活かして仕事をするのが望ましい。企業にとっても、それが明確な人には活躍の場を用意できるだろうし、雇用関係ではない仕事の仕方が見えてくるかもしれない。

もう一つ、需給ギャップを解消するために大切なことは、65歳定年の時代を見据えた企業の人材育成だ。「60歳でも処遇に困っているのに、65歳定年になったら大変だ。」と嘆いていても仕方がない。60歳を超えても活躍できる人材を育成するために、異動や評価や教育の方法を見直さなければならない。成り行きでキャリアを歩ませるのではなく、60歳になっても有効な仕事の能力を、早いうちから、意図してつけさせるようにすることである。これに失敗すれば、今よりももっと処遇に困る人が増えるわけだし、その人件費負担があるから新規採用もできず、組織の新陳代謝がどんどん遅れていくことになる。

もちろん会社に頼る必要はないし、会社は頼りに出来なくなるかもしれないから、個人個人が、いつまでも元気に働き続けられるよう、若いうちから能力の向上やネットワークの構築に自ら励むことが重要だ。そうすることで、会社に扶養されるような状態を避けるだけでなく、独立や引退といった選択肢を含めて、老後の過ごし方を意思を持って決めることができるようになると思う。現状、老後への備えとして経済的な面や健康については関心を持つ人が多いが、働き続けるために何をすべきか、という点での関心はまだ低い。ずっと雇ってもらえるだろう、何か仕事はあるだろう、と考えているのだとすれば、それは危険な発想かもしれない。