過剰な「個人情報保護」が高齢者にもたらす影響 職員が入居者に「誕生日おめでとうございます」と声を掛けるのを禁じている高齢者住宅や高齢者施設があるそうです。理由は、「個人情報保護法違反に当たる可能性があるから」とのこと。2023.05.22 03:45コラム
高齢者住宅に住み替えた高齢者の動機と本音。 高齢者の家族形態は近年、大きく変化しました。内閣府の「高齢者白書」(2021年)で1980年と2019年を比較してみると、高齢者のいる世帯のうち『3世代同居』は50.1%から9.4%まで激減した一方、高齢の単身世帯は10.7%から28.8%と約2.7倍に、夫婦のみの世帯は16.2%から32.3%と倍増しています。約40年で、すっかり「高齢者が高齢者だけで住む時代」になったことが分かります。 ここ数年、高齢者住宅に住み替えた人や、住み替えの検討をする人の声をよく聞くようになりましたが、「長い高齢期を自分たちだけでどうやって暮らしていくのか」と考える人が増えているからだろうと思います。(ちなみに本記事では、分譲型と賃貸型を「高齢者住宅...2023.05.15 07:26コラム
「子どもに迷惑をかけたくない」を実現する、たった一つの方法。高齢者と接していて、もっともよく耳にするのは「子供に迷惑をかけたくない」という言葉です。お墓や葬儀、相続などのこともありますが、ほとんどの場合、介護が必要になって子供たちに苦労や心配をかけるのは避けたいというもので、「ピンピンコロリ」「死ぬならガンが一番よい」とおっしゃる人のも介護の負担が子供に及びにくいからというのがその真意でしょう。ただし、深く話を聴いてみると、「迷惑をかけたくない」には単に負担をかけたくないというだけでなく、もう少し複雑な面もあるようです。たとえば、重い介護状態で身の回りのことが自分で出来ないのは自立や尊厳に関わるもので、自分も子供にも耐え難いし恥ずかしいだろう、といった気持ちです。自分の意思で自分の思うように...2023.04.17 00:49コラム
心豊かな高齢期を過ごすために必要な「3つの基地」高齢期の健康維持には、「運動」「栄養」「交流」が重要だとされています。中でも「交流」が大切です。人と話したり、何かに一緒に取り組んだりする機会が失われた孤独な状態を「社会的フレイル」と呼び、これが運動量の低下や食生活の乱れにつながり、身体や認知機能に悪影響を及ぼすようです。ところが、交流が大切だと分かっていてもなかなかその機会に出ていけない人が、特に男性に多くいます。実際、筆者から見て、講演やセミナーの参加者、趣味やスポーツの会などで楽しむ人たちについて、参加者に占める割合は女性の方が圧倒的に多く、男性は多くて3割といったところでしょう。2023.04.10 05:00コラム
高齢者は“お荷物”なのか?「高齢者は老害化する前に集団自決、集団切腹みたいなことをすればいい」。経済学者・成田悠輔氏の発言が話題となっています。議論するに値しない発言とはいえ、高齢者を単なる“お荷物”のように見ている、彼ほど過激ではないものの似たような考え方の人に、筆者が伝えておきたいことがあります。2023.03.07 01:18コラム
高齢者住宅を、どのように評価すべきか?先日、あるシンクタンクから「高齢者向け分譲マンションの資産価値について意見が聞きたい」という依頼がありました。高齢者向けの分譲マンションはまだ数が少ないために、評価の観点や基準も共通の認識がなく、相場といったものが形成されていません。所有者や検討者、不動産業者、金融機関によってその評価がバラついているのが実態なのでしょう。このような状態だと、例えば売却しようとする際に、思わぬ低い評価をされてしまう危険もあり、一定の合意形成は大切なことだと思います。とはいえ、モノに対する評価は人によって大きく違います。骨董(こっとう)品などを見れば明らかなように、コレクターにとっては垂ぜん物であっても、それをガラクタにしか感じない人もいます。高齢者住...2023.02.09 01:02コラム
高齢者が元気と健康を維持する、たった一つの秘訣 昔に比べて今の高齢者がとても若々しいのは、見た目だけでなく、体力検査などの数値においても明らかになっています。その要因の一つとして、私は、3世代同居が激減した(1986年の約45%から、2021年は約9%となった)ことが大きいと見ています。 一つには、子や孫と一緒に住んでいて「何でもしてもらえた環境」から、高齢者だけで住むようになることで「何でも自分でしなければならない環境」へと変化し、頭や体を日常的に使うようになったこと。もう一つは、高齢者だけで住んでいると、「おじいちゃん」「おばあちゃん」と呼ばれたり、年寄り扱いされたりする機会が減って、年を取った実感がなくなり、気持ちが若くいられるということがあるでしょう。 現代の高齢者の“...2023.01.25 08:45コラム
法制化が見えない日本の「尊厳死」 文藝春秋12月号に、「ゴダール『安楽死』の瞬間」(宮下洋一氏)という記事がありました。「勝手にしやがれ」(1960年)などで知られる映画監督、ジャン=リュック・ゴダール氏が、スイスの団体の支援を得て、2022年9月、薬物を服用して安楽死した件に関するレポートです。 記事では、「日本では安楽死を検討する方向にはまだ動いていないが、個人の生き方(つまり「死に方」)を全面的に尊重する欧米社会との違いによるところが大きい。(中略)安楽死とは本人の希望だけでなく、残された家族の受け止め方も重要なはずである。周囲の気持ちをおもんばかる日本では、ゴダールのように『個の生き方』を貫くことは簡単ではない」と、この問題の難しさを指摘しています。 とは...2023.01.10 04:38コラム
「高齢期の4つの喪失」は、悲観すべきことではない。 人は高齢期に、さまざまな喪失を経験します。おおまかにいえば、「体力や身体機能」「人間関係(配偶者や友人を失ったり、職場の仲間との関係が切れたりする)」「仕事や収入」「役割や立場(果たさなければならない、仕事や子育てや家事などにおける使命)」の4つが挙げられます。そして高齢期には、これらの喪失に適応していくことが重要であるとされています。 しかし、考えてみれば、例えば「人間関係」を失うのが一概に痛恨かというとそうではありません。若い頃には、相性の悪い人や会いたくない人との関係もたくさんあったはずで、それがなくなるのなら、むしろ歓迎すべきことです。 同じように、「仕事や収入」を失ったとしても、仕事にはプレッシャーもあれば、気の進まない...2022.12.12 01:05コラム
高齢期に「住み慣れた場所をつくる」という発想を持つ。「人生の最後は、住み慣れた場所で」という願いは、多くの高齢者に共通しています。加齢による体の不調はあるにせよ、いや、あるからこそストレスを感じない場所で、穏やかに暮らしたいと思うのは当然ですし、「リロケーション・ダメージ」(高齢になってから環境を変えることによって生じる心身の不調)と呼ばれる現象も昔から指摘されています。高齢の親を案じる子どもが、自分たちとの同居や近居を勧めても、頑として今の自宅から動かないという話はよくありますが、これも、環境を変えることへの不安が親御さんにあるからでしょう。2022.10.31 08:11コラム
“超高齢社会”にふさわしい「新しい敬老」を考える「多年にわたり社会に尽くしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う」という趣旨で、「敬老の日」が9月15日に定められたのは1966年のことです(現在は9月の第3月曜日)。それから60年近くたって、同じ「高齢者」といっても、その姿や在りようは大きく変わりました。 1966年ごろといえば、戦争終結から約20年後ですから、そのときの高齢者は実際に戦地に赴いたり、必死の思いで家族を守ったりして生き延びた人たちです。2022.09.19 12:09コラム
マズローの欲求段階説から考える、高齢期の暮らし方。人間の欲求は、「生理的な欲求」「安全への欲求」「所属欲求(社会的欲求)」「承認欲求」「自己実現の欲求」の5つの階層からなるとする、有名な「マズローの5段階欲求説」。この理論から、人生100年時代といわれる現代の長い高齢期の暮らし方について考えてみたいと思います。まず、「5段階欲求」について簡単に確認しておきます。第一の「生理的欲求」は生命を維持するための基礎的なもので、睡眠や食事、排せつなどが該当します。「安全欲求」は危険を感じるような環境を避け、健康で安定した暮らしをしたいという欲求。次の「所属欲求」は、集団や組織に属して人間関係を持ち、他者に受け入れられている状態を望むこと。「承認欲求」は、自分が属している集団の人たちから敬意や...2022.09.05 02:04コラム