「令和3年・高齢社会白書」解説

老いの工学研究所・事務局長:田中利和

令和3年度の内閣府高齢社会白書が公表されましたので、ポイントを解説します。

1.高齢者人口および住まい方

日本の総人口は2019年10月1日現在で1億2,617万人、65歳以上の人口は 3,589万人で総人口に占める割合は28.4%となっています。男女比は約3対4となっており、65~74歳の人口は総人口の13.8%、75歳以上の人口は総人口の14.7%であり、75歳以上の人口が上回っています。

高齢者(65歳以上)人口は団塊の世代が75歳以上となる令和7年(2025年)には3,677万人になると想定されており、当面増加傾向が継続します。一方、65歳以上の方が居る世帯は2018年時点で全世帯数の48.9%を占めており、65歳以上の方が居る世帯(2,492万7千世帯)の内、夫婦のみの世帯は32.3%、単身世帯は27.4%となっており、高齢者の約60%の方が夫婦のみか単身で生活している事となり、この割合は今後増加して行くものと想定されております。

この様な生活環境の中で国際比較調査(アメリカ、ドイツ、スウェーデン)に於いて、日本の高齢者は家族以外で相談が出来る友人が少ないという結果が示されました。

親しい友人の有無について「いない」と回答した方が31.3%にも上がり、次にいないと回答した割合の多いアメリカの14.2%の倍以上となっています。

夫婦のみ、または単身で生活しながら友人も少なく相談できる人が身近に居ないという寂しい生活をせざるを得ないという現実となっており、高齢者の要介護になった原因の1位が認知症である事が納得できる結果となっています。

2.高齢者の医療費

医療費については年々、各年代共に増大しており、特に年齢が上がるほど一人当たりの医療費は増大しております。

60~64歳の年間医療費/  36.7万円(1.0)

75~79歳の年間医療費/  77.5万円(2.1)

80~84歳の年間医療費/  93.0万円(2.5)

85~89歳の年間医療費/ 105.6万円(2.9)

となっており、高齢者の医療費の削減および自己負担増は大きな課題となっています。

3.高齢者の経済的状況

令和元年の内閣府の全国の60歳以上の方の経済的な暮らし向きの調査によると、家計にゆとりがあり、全く心配無く暮らしている」が20.1%、「家計にあまりゆとりは無いが、それほど心配無く暮らしている」が54.0%となり、全体の約4分の3(74.1%)の方が経済的な心配が無く暮らしている状況にあります。

尚、年齢が上がるほど心配無い比率は上がっており、80歳以上では77.2%の方が心配無いと回答しています。

平成28年の調査では、この比率は64.6%であり、約10%近く心配無く暮らしている比率が増加しています。

貯蓄から負債を引いた純資産については

60~64歳/ 2,120万円

70歳以上 / 2,145万円

となっており、2014年では全金融資産の64.5%を60歳以上の方が所有しており、持ち家率も90%以上となっています。

一方で生活保護受給者は65歳以上の方が103万人となり、全体の受給者が減少している中で高齢者の受給者が増大しており、貧富の差が拡大している状況にあります。

4.高齢者の体力、健康に対する意識

2018年の高齢者の体力テストの結果、70~74歳の男女共に2000年のテストに於ける65~69歳の年齢の体力を上回っており、体力的には5歳以上若返っています。

一方で、2018年の運動習慣についての調査によると、運動習慣のある高齢者の割合は、

65~74歳/男性41.8%、女性36.0%

75歳以上 /男性44.4%、女性37.1%

と年齢が上がるほど運動習慣の比率が増えています。

20~64歳の人は男性21.6%、女性16.6%となっており、高齢者ほど自分の健康を意識して積極的に運動に取り組んでいることがうかがえます。