高齢者に、死を学ぶ機会を。80歳の男性に話を伺う機会があった。子供たちが独立し、夫婦二人の暮らしを楽しむために、郊外の戸建の広い家を売って便利の良い立地にあるマンションに引っ越したら、半年後に奥様が末期癌と診断され、しばらくして亡くなったという。73歳のときだった。奥様は末期癌と診断されてから仏教を学び始めたそうだ。本を読む以外に、通信教育にも取り組むほど熱心だった。「暮らしぶりも、最期に自宅で死んだときの様子も本当に穏やかで、安らかだったのは、仏教を学んだからでしょうねえ」と言っておられた。一般には、年を重ねると人生を達観できるようになり、高い視点から生死を理解し、精神的な成熟や超越を得ると考えられている。「老年的超越理論」もそのような学説である。しかし、...2016.05.13 05:48コラム
作られた「高齢者像」を鵜呑みにするな。熊本地震では、メディアの報道姿勢や報道内容に対する批判が多くあった。記者やカメラマンが大挙して押し寄せて避難所の人たちの邪魔になる、報道ヘリの音が救出活動を妨げる、大変な状況にある人への配慮に欠けたインタビューをする、ガソリンスタンドに並ぶ列への割り込みのほか、倒壊しそうな家の前でカメラが待ち構えるといったこともあったようだ。支援物資を送るとか、ボランティア・寄付など何とか役に立ちたいと考える人への情報提供が乏しく、伝えるべき内容がズレているという指摘もあった。こうなる理由は、誰にでも分かりやすい。インパクトのある映像が欲しい、被災者の困難がリアルに伝わる声やエピソードが欲しいからで、目的が視聴率を稼ぐ、販売部数を伸ばすことにあるか...2016.05.02 05:52コラム