親や高齢者と対話し、学ぶヒントに ある写真家の「有終写真」という取り組み高齢者が自分の表情や姿を撮影し、その写真に「大切な人に贈りたいメッセージ」を入れる「有終写真」という活動を行う女性がいます。大阪のフォトスタジオ「soramark」の代表でフォトグラファーの相葉幸子さんです。●親の「姿」と「言葉」を残す彼女はもともと、関西でのマタニティーフォト撮影の草分け的存在です。後に「家族の物語」をテーマに、妊娠中の写真や、誕生した赤ちゃんと一緒に撮った写真、子どもの成長とともに定期的に家族で撮る写真など、その時々のメッセージを入れた写真を残し続けていくサービスを提供。 さらに、5年ほど前から、高齢者を対象とした「有終写真」を始めたそうです。有終写真には、人生の「有終の美」へ向かっていく人の姿を、写真と言葉...2020.05.04 03:29コラム
「老後500万円で大丈夫」説2019年、「老後2000万円問題」が話題になりました。総務省の「家計調査」(2017年)によると、無職の「高齢夫婦のみ」の世帯では、毎月約5万5000円を取り崩して生活しており、赤字は年間で66万円です。つまり、あと30年生きるとすると約2000万円が必要になるというものです。 同じ調査では、高齢者世帯で貯蓄がある人の中央値は1639万円ですから、働かなければ、半数以上の人は老後資金が尽きてしまう可能性があるということになります。ただ、あまり注目されていませんが、これとは全く異なる結果を導いている興味深い論文があります。2020.03.14 03:08コラム
健康寿命は、“どこに住むか” で決まってしまう。「健康上の問題で、日常生活を制限されることなく過ごせる期間」と定義されているのが“健康寿命”で、男性が約72歳、女性は約75歳(2016年調査)となっている。 平均寿命との差は男性が約9年、女性で約12年あり、この期間を短くすることは、個人にとっては高齢期の充実につながるし、国や地方にとっては社会保障費の圧縮につながるから非常に重要な課題で、実際に厚生労働省は、2040年までに男女とも健康寿命を今より3年以上延ばすという目標を掲げた。 健康食品をはじめとして、高齢者を対象とする商品やサービスの宣伝には「健康寿命を延ばそう」というフレーズがあふれているから、高齢者自身の関心も単なる長寿ではなく、健康長寿にあることが伺える。&...2020.02.01 08:17コラム
“本当の”健康寿命は、男女とも80歳を超えています。健康食品など、高齢者向けの商品やサービスのCMでは、よく次のように強調しています。 「健康寿命は今、男性が72歳、女性が75歳。一方、平均寿命は男性81歳、女性87歳なので、男性は9年、女性は12年もの間、支援や介護が必要な状態になっています。この期間を短くし、長く自立生活をするために、○○を習慣にして健康寿命を延ばしましょう」このメッセージに違和感を持つ人はあまりいないようですが、身の回りを見渡してみれば、70代前半の人のほとんどは支援を受けず、自立して生活していることが分かるはずです。2019.12.14 03:34コラム
老人ホーム入所者はなぜ幸せそうに見えないのか 高齢者の幸福は「自己決定」で決まる「幸福感は『健康』『人間関係』に次いで『自己決定度』に影響を受ける」とする興味深い論文が、2018年9月に発表されました。神戸大学の西村和雄特命教授と同志社大学の八木匡教授による「幸福感と自己決定-日本における実証研究」です。 この研究は、日本人約2万人の調査を行い、分析したもので、その要旨には「幸福感を決定する、健康、人間関係に次ぐ要因としては、所得、学歴よりも自己決定が強い影響を与えている。自分で人生の選択をすることが、選んだ行動の動機付けと満足度を高める、それが幸福感を高めることにつながるのであろう」とあります。 調査では、以前から他の研究でも指摘されていた「幸福感は若い時期と老年期に高く、35~49歳で落ち込む『U字...2019.11.17 03:39コラム
終活で「住まいの見直し」を検討すべき理由「終活」と聞くと、「相続」「保険」「葬儀」「墓」「物品の整理(断捨離)」「終末医療に関すること」を思い浮かべる人が多いことでしょう。確かに、これらの準備は残される子どもや親族を混乱させないために重要です。しかし、私は一つ忘れられている項目があるように感じます。それは「住まいの見直し」です。これは高齢者だけでなく、高齢の親を持つ現役世代の人たちにも考えてほしい問題です。2019.10.16 03:50コラム
高齢期の10の価値。高齢期に大切にしたいことは何か?「エイジング・アンカー」アメリカの心理学者、エドガー・シャインが提唱した有名な「キャリア・アンカー」は、職業人が自らのキャリアの形成・選択を考える際に、もっとも大切にしたい(どうしても犠牲にしたくない)価値や欲求のことを言う。ちなみに、アンカー(anchor)は船の錨(イカリ)のことで、“動かせない点”といった意味である。そしてシャインは、キャリア・アンカーを、①管理(組織の中で、責任ある役割を担うことを望む)、②技術的能力(専門性や技術の向上を望む)、③安全・安心(安定した組織に属していることを望む)、④創造性(新しいことをする、創造的な仕事に取り組むことを望む)、⑤自律(自分の思うように、独立した仕事をすることを望む)、⑥奉仕・貢献(社会貢献や他者への...2019.10.10 08:23コラム
「有料老人ホーム」と「サービス付き高齢者住宅」は、もう要らない(老いの工学研究所 事務局長:田中利和)●介護保険制度の今後現在、我が国は、医療費および介護保険給付費を抑制するために、健康寿命の延伸に力を入れています。健康寿命とは「日常生活に制限の無い期間の平均」ですが、現状、男性が72.1年、女性74.8年となっています。ほとんど知られていませんが、国は、健康寿命とは別に「日常生活動作が自立している期間の平均」を発表しています。これは「日常生活に制限の無い期間の平均」を補完するための指標で、要介護認定1までが含まれます。(要支援や要介護1は、自立しているとみなしているわけです。)この指標では、男性79.4年、女性83.8年となり、いわゆる健康寿命より7~9年伸びます。医療費、介護保険給付費の抑...2019.05.10 05:26コラム
高齢者は、なぜ「運転免許」を返したがらないのか?webメディア「オトナンサー」の取材に答えた記事です。4月19日午後、東京・池袋で高齢男性が運転する乗用車が暴走し、自転車に乗っていた母娘が死亡、10人が負傷する事故がありました。報道によると、運転していた高齢男性は脚が悪く、つえをついて歩いており、周囲に「車の運転をやめる」と話していたといいます。 近年、高齢ドライバーによる交通事故が相次いでおり、ネット上では「高齢ドライバーは自ら進んで免許を返納すべき」との声が高まっていますが、その一方で「私の祖父は、家族で説得しても返納してくれない」「本人が『まだ運転できる』と言って聞かない」「どう話せば運転をやめてくれるのか」など、免許返納の説得に頭を抱える声も多く上がっています。 ...2019.04.18 03:42コラム
ビジネスは、医療に学べドラッカーは「事業の目的は、顧客の創造である」と言っています。既存のターゲット顧客の要望に応えて目前の利益を追い求めるのではなく、顧客や商品を再定義し、潜在的なニーズを掘り起こす(顧客へ気づきを与える)ことによって、新たな顧客(顧客価値)を創造し続けることが重要であるという意味です。医療は、「健康診断」「歯科検診」「人間ドッグ」といった手段で顧客を創造しつづけています。医療の顧客は病人ですが、健康診断は、より多くの人に病人である(病人になりそうだ)という自覚を促し、病院に行ってもらうようにする顧客創造装置として機能しています。さらに、そんな現状に満足することなく、最近ではメタボやストレスといった診断項目を増やして、さらに多くの顧客(...2017.06.20 05:38コラム
高齢男性で家事をやっている人は、何%?専業主婦世帯の割合は、30年ほど前には6割超だったが、現在は4割弱にまで減ってきた。統計上、配偶者控除を受けられる範囲内で妻が働いている世帯は「専業主婦世帯」とカウントされているので、昔のような、妻がまったく働いていない専業主婦世帯の割合はもっと少ないはずだ。 30年前というと男女雇用機会均等法が出来た頃で、少なくとも都会では共働きは珍しかったし、「妻がパートに出ている」というのはお父ちゃんの面目がつぶれるような響きがあった。「男は仕事、女は家庭」という価値観が支配的で、男子厨房に入らずは当然のこと、家事などしようものなら「嫁さんに逃げられたか」と冷やかされた時代。だいだい、週休二日も定着していなかったし、労働...2016.11.11 08:29コラム
エイジングの4ステップ父親が息を引き取った。肺癌で緩和病棟におり、近く訪れる死を受け入れ、死と向き合った数か月だったように思う。数年前、父の「90歳まで生きたい」という言葉に、年齢を目的にするのか・・と感じて少しがっかりした覚えがあった。ここ数か月は父親に対して言うのははばかられるものの、高齢者としての成長・成熟を見た思いがする。死に向き合い、人生を総括しながら、からだは苦しかっただろうが、精神的な落ち着きや生への達観が表情には見て取れた。人間的完成に近づくとは、こういうことかとも思った。中高年の脳や知力と心理的成長について研究したジーン・コーエン博士は、人生の後半期における成長と発達のステージとして、「再評価段階」「解放段階」「まとめ段階」「アンコール...2016.09.20 05:42コラム